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分散型臨床試験が2035年に325億ドル市場へ拡大、治験は患者の自宅へ移れるのか

分散型臨床試験が2035年に325億ドル市場へ拡大、治験は患者の自宅へ移れるのかのイメージ

本ページは治験・臨床試験の制度と業界を整理したもので、治験への参加の勧誘や医療上の助言ではありません。

ニュースの概要

市場調査会社SNS Insiderは、分散型臨床試験(DCT)の世界市場が2025年の87億ドルから2035年には325億ドルへ広がると予測した。2026年から2035年までの年平均成長率は14.12%である。DCTは、遠隔診療やウェアラブル機器、スマートフォンのアプリを使い、患者が医療機関に通う回数を減らしながら検査値や症状のデータを集める方式だ。患者を中心に据えた試験設計が製薬企業や開発業務受託機関(CRO)に支持され、病院に患者を集める従来型の進め方からの転換が進んでいるという。今回の数字は、治験の運営方法そのものが変わりつつあることを市場規模で示したものといえる。

引用元: 分散型臨床試験市場、2035年に325億ドルへ拡大との予測(SNS Insider)

分析・見解

年14%成長の裏にある、新薬開発の時間とお金の問題

新薬の開発では、被験者(=治験に参加する人)を集める段階で計画が遅れやすい。参加が決まっても、通院の負担から途中でやめる人が出る。脱落が増えればデータの価値が下がり、追加募集の費用もかさむ。DCTが年率14%超で伸びる最大の理由は、「集める」と「続けてもらう」を同時に改善できる可能性にある。

たとえば希少疾患の試験では、対象者が全国に散らばっている。専門病院まで数時間かけて通う必要があれば、地方の患者は最初から参加を諦める。自宅で採血や診察の一部を済ませられれば、参加できる地域は一気に広がる。

完全な遠隔ではなく、通院と自宅を組み合わせる型が主流

市場予測を読むときに押さえたいのは、DCTが「病院をなくす仕組み」ではない点だ。実際には、初回の診察や重要な画像検査は医療機関で行い、定期的な確認は自宅で行う混合型(ハイブリッド型)が中心になる。コロナ禍で遠隔試験が急増したのは、感染対策という緊急の理由があったからだ。平時に定着するかは、安全性の確認をどこまで自宅でできるかにかかっている。

副作用が重い薬や点滴で投与する薬では、医師の目の前での観察が欠かせない。一方、慢性疾患の経過観察や長期の試験は、自宅での測定に向いている。

ウェアラブル機器がもたらすのは便利さより連続データ

技術面での本当の価値は、患者の負担軽減だけではない。従来の治験では、数値が取れるのは数週間おきの来院時だけだった。血圧や心拍、睡眠、歩数を腕時計型の機器で毎日測れば、来院と来院の間の変化も捉えられる。点の記録が、線の記録に変わるのだ。

パーキンソン病のように症状が日内で揺れる病気では、診察室の一瞬より自宅での一日の動きのほうが実態を映すことがある。ただし、機器ごとに測定精度は異なる。規制当局に認められる指標として使うには、機器の検証が欠かせない。

データの質と患者の格差が、成長を左右する二つの壁

予測どおりに伸びるかは、二つの壁を越えられるかで決まる。一つはデータの質だ。自宅で測った値が正しい手順で得られたと、誰がどう確認するのか。装着忘れや本人以外の操作をどう見抜くかも課題になる。もう一つは参加者の偏りだ。スマートフォンに不慣れな高齢者や通信環境が弱い地域の人が外れれば、結果が実際の患者層を映さなくなる。

今後の差は、技術の新しさより患者サポートの設計で付くと考える。使い方を教える窓口、機器の配送と回収、困ったときの電話相談。こうした地味な運用が脱落率を左右する。

ビジネスへの影響

製薬企業は全試験の一括移行より、部分導入から始める

意思決定者がまず行うべきは、自社の試験を「自宅に移せる工程」と「移せない工程」に分けることだ。採血の一部、問診票の記入、服薬の確認、血圧の測定などは移しやすい。初回投与や重い副作用の観察は、病院に残すのが安全である。全面移行を目指すより、来院回数を三割減らすといった具体的な目標を一つ決め、小さな試験で検証するほうが失敗しにくい。社内の合意形成では、経営層には期間短縮、現場には負担軽減と、立場ごとに利点を説明すると進みやすい。

CROと医療機関は、機器と患者の窓口を担う力が問われる

CRO(=治験の運営を請け負う会社)にとっては、機器の手配、データの統合、患者への問い合わせ対応が新しい収益源になる。逆に、従来の来院管理だけでは差別化が難しくなる。医療機関側も、自宅で得たデータを診療記録とつなぐ作業が増える。治験コーディネーターの仕事は、来院の調整から、遠隔での見守りへと広がるだろう。人員配置と研修の見直しを、導入前に済ませておきたい。

見積もりで見るべきは単価ではなく脱落率とやり直し費用

機器や遠隔システムは、一件あたりの費用だけを見ると従来型より高く見える。しかし、被験者の募集期間が短くなり、脱落が減れば、全体の費用は下がる可能性がある。比較するときは、募集にかかった月数、脱落率、データの欠損による再測定の費用を同じ基準で並べたい。あわせて、個人情報の扱いや各国の規制への対応、機器の故障時の代替手順も契約書に明記しておくこと。市場が拡大する局面では、ベンダー(=外部の提供会社)の乱立も起きやすい。実績のある試験での運用事例を必ず確認すべきだ。

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