DCTを支えるデジタルツールの全体像
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本ページは企業情報の整理であり、特定のツールの推奨や治験参加の勧誘ではありません。
分散型臨床試験(DCT)は、特定の一つのシステムで成り立つものではありません。被験者が自宅などで症状や服薬を記録する電子患者日誌(ePRO、より広くはeCOA)、説明文書の提示と同意の取得を電子的に行うeConsent、診察をオンラインで行う遠隔診療、試験データを電子的に収集するEDC、治験薬の割付と供給を管理するRTSM、治験の運営情報を管理するCTMSやeTMFなど、複数の仕組みが組み合わされて使われます。
本ページでは、これらを提供する企業のうち、公式サイトで提供機能を確認できた7社を、機能の種類で整理します。国内発のサービスと海外発のプラットフォームが並びますが、それぞれの提供範囲は同一ではありません。公式サイトに記載が見当たらない機能は「-」と表記していますが、提供していないと断定するものではありません。
用語の整理として、ePROは患者自身が報告するアウトカムを電子的に収集する仕組み、eCOAは患者報告に加えて、臨床医の評価や観察者の報告、パフォーマンスの測定なども含む広い概念です。eConsentは説明文書の提示と同意の記録を電子化するもので、国内の通知上の位置づけは制度・規制の整理で取り上げています。CRO・SMOとの関係はCROの比較、SMOの比較を参照してください。
【比較表】DCT・ePRO・eConsent関連ツール7社の提供機能
| 企業 | 提供元 | 主な提供機能(公式記載) | ePRO・eCOA | eConsent | 遠隔診療 | EDC | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| MICIN(MiROHA) | 国内発 | オンライン診療(MiROHA Online Treatment)、電子同意(MiROHA eConsent)、電子ソースデータ(MiROHA eSource) | - | ○ | ○ | - | 本社:東京都港区西新橋(公式サイト記載) |
| Buzzreach(バズリーチ) | 国内発 | StudyWorks Platform(治験業務管理)、P.R.(電子カルテデータに基づく被験者募集支援)、smt、スタディコンシェルジュ(服薬・来院通知アプリ)、FeasiCon | 服薬・来院通知アプリあり | 構想として公式サイトに記載 | 構想として公式サイトに記載 | - | 公式サイト参照 |
| Medidata(メディデータ) | 海外発 | CTMS、eTMF、eCOA、Consent、DCT、Rave EDC、RTSM、Imaging など | ○(eCOA) | ○(Consent) | 公式サイト参照 | ○(Rave EDC) | 38,000件以上の試験で利用(公式サイト記載) |
| Veeva Systems(ヴィーバ) | 海外発 | Veeva Clinical Platform:eTMF、CTMS、Study Startup、RTSM、EDC、eCOA、SiteVault など | ○(eCOA) | - | - | ○(EDC) | 公式サイト参照 |
| Signant Health(シグナント・ヘルス) | 海外発 | eCOA/ePRO、EDC、RTSM、患者向けアプリ、eConsent、遠隔医療(Telemedicine)、臨床コンサルティング | ○(eCOA/ePRO) | ○ | ○(Telemedicine) | ○ | 公式サイト参照 |
| Clario(クラリオ) | 海外発 | 心臓関連、eCOA、医用画像、運動機能測定、呼吸器関連、臨床判定 | ○(eCOA) | - | 公式サイト参照 | - | 施設型・ハイブリッド・分散型の各試験形態をサポート(公式サイト記載) |
| 3Hメディソリューション | 国内発 | DCT/分散型臨床試験サポートサービス、在宅治験ナーシングサービス、DCT導入に向けたPoCサービス、被験者募集・治験広告、ヘルプデスク&事務支援 | 公式サイト参照 | 公式サイト参照 | 在宅治験ナーシングサービスを掲載 | 公式サイト参照 | 2024年7月に3Hクリニカルトライアルと合併。本社:東京都豊島区南池袋 |
2026年10月時点、各社公式サイト・公開資料に基づく。最新情報は各社サイトで確認してください。「公式サイト参照」は本ページで数値や詳細を示していない項目、「-」は公式サイトで該当の提供を確認していない項目です。
表中の「○」は公式サイトで該当機能の提供を確認できた項目です。国内の電磁的記録・電子署名に関する指針や、米国の21 CFR Part 11などへの適合性の記載は、企業ごとに掲載のされ方が異なるため、本表では比較せず、各社の公式資料でご確認ください。
各社のプロフィール
表に掲載した7社の公式サイトの記載を、プロフィールとして整理します。評価や推奨ではありません。
MICIN(MiROHA)
MICINは公式サイトで、医療テクノロジーを四つの事業で展開しており、その一つに臨床開発向けのデジタルソリューションMiROHAを挙げています。MiROHAには、治験の来院を代替するオンライン診療のMiROHA Online Treatment、電子的な説明・同意取得のMiROHA eConsent、治験データを電子化するMiROHA eSourceがあります。ほかに、オンライン診療サービスや治療用アプリ関連の事業も公式サイトに掲載されています。2024年のニュースには、がん領域でのeConsentの事例が見られます。
Buzzreach(バズリーチ)
Buzzreachは公式サイトで、治験や臨床研究の期間短縮と費用削減を目指すDRO(Digital・Decentralized・Data Research Organization)を掲げています。SaaS型の統合業務プラットフォームStudyWorks Platformを中心に、電子カルテデータに基づく被験者募集支援P.R.、治験情報の公開・管理を行うsmt、被験者向けの服薬・来院通知アプリ、フィージビリティ調査の支援サービスなどを提供しています。DCTでは、eRecruit、eConsent、オンライン診療、治験薬の配送、ウェアラブルデバイスなどを業務管理プラットフォームに統合する構想が示されています。
Medidata(メディデータ)
Medidataは公式サイトで、臨床試験の運営を支援する統合プラットフォームを提供する企業と紹介されています。提供領域は、試験運営(CTMS、eTMF、施設への支払いなど)、患者体験(eCOA、Consent、DCT、患者ポータルなど)、データ管理(Rave EDC、RTSM、医療用語の自動コーディングなど)に整理されています。公式サイトには、38,000件以上の臨床試験で利用されているとの記載があります。CRO向けのパートナープログラムも掲載されています。
Veeva Systems(ヴィーバ)
Veevaは日本語の公式サイトで、ライフサイエンス業界向けにアプリケーション、AIエージェント、データ、コンサルティングを提供すると紹介しています。治験関連では、治験業務を統合するVeeva Clinical Platformがあり、臨床運営としてeTMF、CTMS、Study Startup、RTSM、Site Connectなど、臨床データとしてEDCやeCOAなどが掲載されています。研究施設向けにはSiteVaultなど、ペーパーレス化やリモートモニタリングを支援する製品が紹介されています。
Signant Health(シグナント・ヘルス)
Signant Healthは公式サイトで、臨床試験向けの技術とサービスを提供し、スポンサーやCROが意思決定や規制当局への提出に使えるデータを得られるよう支援すると説明しています。主なソリューションは、臨床データ収集(eCOA/ePRO、EDC)、治験薬管理(RTSM)、患者エンゲージメント(患者向けアプリ、eConsent、遠隔医療)、臨床データ分析、臨床コンサルティングです。データ管理と治験薬管理を同じ体制で提供できる点が、公式サイトに強みとして示されています。
Clario(クラリオ)
Clarioは公式サイトで、臨床試験のエンドポイント技術とそれを支えるソリューションを提供する企業と紹介しており、現在はThermo Fisher Scientificの一員とされています。主な領域は、心臓関連の評価、eCOA、医用画像、ウェアラブルセンサーによる運動機能測定、呼吸器関連の評価、臨床判定などです。第I相から第IV相まで対応し、施設型、ハイブリッド、分散型の各試験形態をサポートすると記載されています。AI活用も進めており、ISO 42001認証を取得したとされています。
3Hメディソリューション
3Hメディソリューションは、公式サイトで臨床試験に関連するサービスを幅広く掲載している企業です。2024年7月1日に3Hクリニカルトライアルと合併し、3Hメディソリューションが存続会社となりました。サービスメニューには、DCT、被験者募集、臨床研究支援、ヘルスケアIT、リサーチ&プロモーション、ヘルプデスク&事務支援、アジアネットワーク、Patient Centricityが挙げられています。DCT関連では、分散型臨床試験のサポートサービスのほか、被験者の自宅などに看護師が訪問する在宅治験ナーシングサービス、DCTを導入する前に検証を行うPoCサービスが掲載されています。他のツール提供企業がeCOAやEDCなどのシステムを中心にしているのに対し、同社は人的な支援と被験者募集を含むサービス型の提供が公式サイトの構成から読み取れます。被験者募集の側面は被験者募集の実務とAI活用で、SMOとの関係はSMOの比較で整理しています。本表のeCOA、eConsent、EDCの欄は、公式サイトの記載から機能名として確認できないため「公式サイト参照」としています。
ツールを調べるときに確認したい視点
DCT関連のツールを公開情報から理解する際には、次のような視点で整理すると、機能の重複や不足を把握しやすくなります。
- 被験者の体験に関わる機能:ePRO、eConsent、オンライン診療、通知アプリなど、被験者が直接触れる機能がどこまで含まれるか。
- 医療機関・運営側の業務に関わる機能:EDC、CTMS、eTMF、RTSM、施設への支払い管理など、治験の運営に関わる機能がどこまで一つのプラットフォームにまとまっているか。
- データの種類:患者報告、臨床医の評価、画像、心電図、ウェアラブルのデータなど、扱うデータの範囲。
- 規制・基準への対応:国内の電磁的記録・電子署名に関する考え方、個人情報の取り扱い、海外の基準への適合に関する各社の説明。
- 導入形態:単体の機能として使えるのか、CROや医療機関が既存の仕組みと組み合わせて使うのか。
治験は依頼者、CRO、医療機関が連携して進めるため、ツールの導入はいずれか一者の判断だけで決まるものではありません。依頼者が指定する場合もあれば、CROが提供する仕組みを用いる場合もあり、医療機関側の対応能力も影響します。規制面の確認事項は制度・規制の整理に、被験者募集の仕組みは被験者募集の実務とAI活用にまとめています。
電子的なデータや同意の取り扱いに関する一次情報は、厚生労働省の公式サイトとPMDAの公式サイトで公開されています。ツールを提供する各社の説明と合わせて、最新の内容をご確認ください。
ツールの機能を読むときの留意点
表の「○」や「-」は、公式サイトの記載の有無を示すもので、機能の優劣や導入のしやすさを示すものではありません。同じ「eCOA」という名称でも、収集できる項目や対応する評価尺度、国内での運用実績は異なります。また、ツールの機能は頻繁に更新され、国内向けの提供状況が変わることもあります。
さらに、治験で使用する電子システムは、依頼者の要件、CROの運用、医療機関の環境、被験者のデバイスなどの条件によって、実際の使い方が大きく変わります。そのため、導入を検討する場合は、各社の公式資料や担当者への確認、必要に応じた妥当性確認が求められます。本サイトの比較表は、そのための入口となる事実項目の整理にとどまります。
