SMOとは何か、CROとの違い
最終更新日:
本ページは企業情報の整理であり、特定の企業の推奨や治験参加の勧誘ではありません。
SMO(治験施設支援機関)は、治験を実施する医療機関の業務を支援する企業です。治験では、被験者への説明の補助、スケジュール管理、検査や来院の調整、症例報告書の作成補助、治験依頼者やCROとの連絡、治験審査委員会の事務局運営など、医療機関の側に多くの事務・調整業務が生じます。医師や看護師、薬剤師がこれらをすべて担うと、日常診療に影響が出るおそれがあります。そのため、医療機関と契約を結び、治験コーディネーター(CRC)の派遣や事務局業務の受託を行うSMOが、国内の治験で一定の役割を果たしています。
CROが製薬企業などの依頼者側を支援するのに対し、SMOは医療機関側を支援します。つまり、同じ治験の現場に対して、依頼者側と実施側の両方に支援企業が存在する構図です。両者の役割の違いは治験業界の全体像でも触れています。依頼者側の支援企業についてはCROの比較を参照してください。
本ページでは、公式サイトで事業内容を確認できたSMO関連の5社と、治験ネットワーク・被験者募集支援の1社の計6社を取り上げます。SMO事業はCROやCDMOと並ぶグループ内の一事業として位置づけられている企業もあれば、SMOを中心に事業を展開する企業もあります。そのため、企業単位ではなく、SMO事業に着目して整理しています。数値や詳細を示していない項目は「公式サイト参照」と表記します。
【比較表】SMOと治験ネットワーク6社の支援内容
| 企業 | 位置づけ・親会社 | 主な受託業務 | 特色(公式記載) | 拠点・対応範囲 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| シミックヘルスケア・インスティテュート(CHI) | シミックグループ(CMIC GROUP)に属する | 医療機関の治験・臨床研究支援(SMO業務)、治験参加者募集、患者サポートプログラム(PSP)、コンタクトセンター | 「医療機関における治験の実施・運営を20年以上トータルサポート」と記載(公式サイト) | 本社:東京都港区芝浦(公式サイトのアクセスページ記載)。全国に事業所・サテライトを展開 | CRC・SMAの採用情報とIRB事務局業務を公式サイトに掲載 |
| EPリンク(EPLink) | EPSホールディングスのグループ。親会社は株式会社EPNextS(公式サイト記載) | SMO事業。治験コーディネーター、治験事務局、IRB事務局などの支援 | 全国提携医療機関数 約7,700施設、CRC数 1,405人(公式サイト記載) | 31拠点(公式サイト記載)。本社:東京都千代田区六番町 | 設立1999年12月(公式サイト記載) |
| ノイエス | エムスリーグループとの連携を掲載 | CRC業務、治験事務局支援(SMA業務)、IRB事務局支援、心理評価サポート | 治験の「e化」を重点テーマとして掲載 | 医療機関向け・治験依頼者向けの支援 | 公式サイト参照 |
| アイロムグループ(SMO事業) | アイロムグループ | SMO事業(先端CRDMO事業と並ぶ主要事業) | 公式サイト参照 | 公式サイト参照 | 東京都千代田区(本社) |
| クリニカルサポート | 公式サイトでSMO事業が主力と記載 | CRC業務、IRB事務局業務、治験事務局業務 | 提携施設の約80%が病院で、大学病院やがんセンターなどの大規模病院が中心(公式サイト記載) | 全国7拠点(東京、仙台、大阪、奈良、福岡、熊本ほか。公式サイト記載) | 公式サイト参照 |
| 3Hメディソリューション | 2024年7月1日に3Hクリニカルトライアルと合併(3Hメディソリューションが存続会社) | 被験者募集・治験広告、DCT/分散型臨床試験サポート、臨床研究支援、在宅治験ナーシングサービス | 治験情報サイト「生活向上WEB」、がん治験情報サイト「オンコロ」、希少疾患情報サイト「rares」を運営(公式サイト記載) | 本社:東京都豊島区南池袋 | 位置づけは治験ネットワーク・被験者募集支援であり、SMOではありません |
2026年10月時点、各社公式サイト・公開資料に基づく。最新情報は各社サイトで確認してください。「公式サイト参照」は本ページで数値や詳細を示していない項目、「-」は公式サイトで該当の提供を確認していない項目です。
提携医療機関数やCRC数は、各社が公表する時点・基準が異なります。記載がある場合も、基準は各社の公表によります。同じ項目で単純に大小を比べることはできないため、最新の数字は各社の公式サイトでご確認ください。
各社のプロフィール
表に掲載した6社について、公式サイトの記載をもとに整理します。評価や推奨ではありません。
シミックヘルスケア・インスティテュート(CHI)
シミックヘルスケア・インスティテュートは、CMIC GROUPに属し、SMOの草分け的存在として知られる企業です。公式サイトでは、医療機関における治験の実施・運営を20年以上トータルサポートしてきたと記載しています。事業は、治験・臨床研究支援(SMO業務)のほか、医療・ヘルスケアに特化したコンタクトセンター、治験参加者の募集、患者サポートプログラム(PSP)、特定保健指導・重症化予防、ヘルスケアポータルサイトなど多岐にわたります。本社は東京都港区芝浦にあり、関東から北海道、東北、中部、関西、中国・四国、九州までの各地に事務所やサテライトが掲載されています。同じCMIC GROUPにCROを持つ点はCRO比較ページとあわせて読むと整理しやすくなります。
EPリンク(EPLink)
株式会社EPLinkは、EPSホールディングスのグループに属するSMOです。公式サイトによると、親会社は株式会社EPNextSで、本社は東京都千代田区六番町、設立は1999年12月です。公式サイトのトップには、全国提携医療機関数が約7,700施設、拠点が31拠点、CRC数が1,405人と掲載されています。事業はCRC業務、治験事務局業務(SMA)、IRB事務局業務などの治験実施施設支援が中心で、治験DXを推進するシステムの提供も手がけているとの記載が求人情報などで見られます。数字の基準や時点は同社の公表によるため、他社の数値との単純な比較は避け、最新の内容は公式サイトでご確認ください。
ノイエス
ノイエスは、公式サイトで治験施設支援機関として、医薬品・医療機器の治験を医療機関側から支援すると紹介しています。受託業務としてCRC業務、治験事務局支援(SMA業務)、IRB事務局支援、心理評価サポート(心理士業務)が掲載されています。治験の「e化」を重点テーマに掲げており、エムスリーグループとの連携も公式サイトに記載されています。医療機関向けと治験依頼者向けの支援の両方のページが用意されている点が、公式サイトの構成から読み取れます。
アイロムグループ(SMO事業)
アイロムグループは、公式サイトで、SMO事業と先端CRDMO事業を事業の柱としています。SMO事業は、医療機関の治験実施を支援する事業として位置づけられ、先端CRDMO事業にはCDMOやCROが含まれます。本社は東京都千代田区にあり、2025年5月に株式の上場廃止に関するお知らせが公式サイトに掲載されています。SMOとCRO・CDMOを同じグループに持つ点はCRO比較ページの記載と合わせて整理できます。
クリニカルサポート
クリニカルサポートは、公式サイトで、治験実施医療機関を支援するSMO事業が主力と記載しています。受託業務はCRC業務、IRB事務局業務、治験事務局業務で、医療機関での治験の活性化や実施体制の構築、医師による研究・調査の支援も行うとされています。提携施設の約80%は病院で、大学病院やがんセンターなど大規模病院が中心と公式サイトに記載があります。事業所は全国7拠点とされ、東京本社、仙台、大阪、奈良医大前、福岡、熊本などが挙げられています。
3Hメディソリューション
3Hメディソリューションは、東京都豊島区南池袋に本社を置く企業で、公式サイトでは2024年7月1日に3Hクリニカルトライアルと合併し、3Hメディソリューションが存続会社になったと告知されています。サービスメニューには、DCT、被験者募集、臨床研究支援、ヘルスケアIT、リサーチ&プロモーション、ヘルプデスク&事務支援、アジアネットワーク、Patient Centricityが並びます。治験情報サイト「生活向上WEB」、がん治験情報サイト「オンコロ」、希少疾患情報サイト「rares」の運営や、在宅治験ナーシングサービスも掲載されています。医療機関にCRCを派遣するSMOではなく、治験ネットワークや被験者募集の支援を軸とする企業として、本表では区分を分けて記載しています。被験者募集の制度面は被験者募集の実務とAI活用で整理しています。
治験コーディネーター(CRC)の役割
SMOの中心的な業務を担う職種が、治験コーディネーター(CRC)です。CRCは、治験責任医師などの指示のもとで、医学的判断を伴わない業務や、治験に関わる事務的な業務、チーム内の調整を行います。たとえば、被験者への説明内容の補足、来院日程の調整、検査や投薬の実施状況の確認、症例報告書の作成補助、依頼者やCROの担当者との連絡などが含まれます。
CRCには、医療機関に所属する場合と、SMOから派遣される場合があります。SMOに所属するCRCは、複数の医療機関を担当することもあり、治験の種類や施設の体制に応じて業務の内容が変わります。CRCの育成や資格の仕組み、年収に関する公的統計の見方はコスト構造・資格・職種で触れています。
なお、被験者の立場から見ると、CRCは治験を進める過程で接する窓口の一つになります。治験への参加は本人の自由な意思に基づくものであり、参加の判断に必要な説明は、治験責任医師などから受けることになります。参加の検討には、担当医師の説明と文書による同意の手続きが前提です。この点は被験者募集の実務とAI活用で、同意説明や負担軽減費の制度も含めて取り上げています。
SMOの事業内容を調べるときの確認項目
SMOの事業を公開情報から把握する際は、次のような項目を整理すると、各社の違いを事実に基づいて理解できます。契約条件や費用の詳細は個別の交渉事項であり、公開情報だけでは確認できないことが多いため、ここでは公式サイトで確認できる範囲に限っています。
- 受託する業務の種類:CRC業務のみか、治験事務局(SMA)、IRB事務局、心理評価などの専門業務まで含むか。
- 提携する医療機関の種類:病院が中心か、診療所も含むか。大学病院やがんセンターなどの大規模病院との取引を明示しているか。
- 拠点の分布:全国のどの地域に事業所があるか。地域によって、担当できる医療機関の範囲が変わります。
- グループ構成:CROやCDMO、CSOなどの関連事業を同じグループに持つか。依頼者側の支援とどのように連携するか。
- デジタル化の取り組み:治験のe化、電子同意、遠隔でのモニタリング対応などを掲げているか。
これらの項目は、医療機関が治験の支援体制を検討するときにも、依頼者がSMOと連携する場面でも出てくる論点です。ただし、各社の取り組みの優劣を判断するものではありません。個別の導入判断は、各社への問い合わせや契約交渉の中で、必要な資料を取り寄せて行うことになります。
SMOとDXの関係、医療機関側の課題
SMO各社の公式サイトでは、業務の電子化やデジタルの活用が語られる場面が増えています。たとえばノイエスは、治験の「e化」を重点テーマとして掲げています。EPLinkは、治験DXを推進するシステムの提供も事業に含めていると、複数の公開情報で示されています。治験の現場では、紙の書類の取り扱い、モニタリングの来院対応、症例報告書の入力、同意取得の記録などに多くの手間がかかるため、これらを電子化する取り組みは、SMOにとっても重要な課題です。
医療機関側の課題として、大規模病院では治験の件数が多く、事務局やCRCの体制が必要になること、地域の診療所では治験の経験や体制が限られることなどが指摘されます。DCTの要素が加わると、オンライン診療や遠隔でのデータ取得、治験薬の配送など、従来の医療機関の業務の範囲を超える調整も生じます。こうした運営を支える仕組みを提供するデジタルツールは、【比較表】DCT・ePRO・eConsentツールの提供機能で整理しています。
治験の実施に関する基準は、厚生労働省の通知やPMDAの情報で確認できます。一次情報は厚生労働省の公式サイトで公開されています。SMOと医療機関が契約を結ぶ際の考え方や、委受託業務の範囲は、制度・規制の整理で説明するGCP省令とその運用通知に沿って検討されます。
よくある疑問:SMOを利用するのは誰か
SMOの契約の相手方は、一般に、治験を実施する医療機関です。医療機関がSMOに業務を委託し、その費用は治験の依頼者から支払われる治験費用の中から賄われる形が一般的とされます。委託の範囲や費用の考え方は、医療機関ごとの方針や契約によって異なり、公開情報だけでは一般化できません。
また、SMOが関与する場合でも、治験の実施に関する責任は、治験責任医師と実施医療機関にあります。SMOは、あくまで業務を支援する立場です。被験者として治験の説明を受ける場合の窓口は、医療機関の医師や、CRCなどの担当者であり、説明の内容は治験審査委員会で承認された文書に基づきます。この仕組みの全体は制度・規制の整理に整理しています。
